ライフステージの苦しみ・悩み
人間が生きていくには、誰もが共通の生活段階を経ていきます。
進学・就学→就業・仕事→結婚→家庭生活・子育て→老境
このような生活の諸段階で、被爆者たちの半世紀はどうだったのでしょうか。
(参考文献:原爆被爆者の半世紀)
進学・就学
支障がおきたと答えた被爆者は全体の12%、被爆当時19歳以下の人の20%にものぼる。
内容:家族の死や病気のため、また本人自身の病気 のために、進学・進級が遅れたり、資格・学
歴をえようとしてもできなかった。
就業・仕事
苦労したことのある被爆者は、全体の24%。悩みをもった被爆者は女子より男子が多く、また被爆時に15〜19歳だった人が非常に高率。
内容:就職時に不採用就職しても人並みに働けず職を転々とした。仕事がきつく体がいっそう悪くなった。
・家族や崩壊し財産も失った被爆者にとって、自分の生計をたてていくには、自分が苦労する以外にはありません。まさしく体は資本だったのです。だが、そのからだが病気がちだったり、ケロイドをもっていたり負傷して障害者になっていた場合、それは就職するうえでも仕事をやっていくうえでも大きな故障になります。
山口 仙二氏(就職)
結婚
悩んだと回答した被爆者は全体の24%、被爆者当時19歳以下の人の約3割にものぼる。
内容:結婚に反対された経験をもつ。 20%
被爆者であることをかくして結婚した。30%
婚期が遅れた。 8%
結婚をあきらめた。 5%
・どんな障害があろうとも二人の愛情がしっかりしていれば、結婚は成り立つとはいうものの、被爆者ということになると、将来、本人の健康や生まれてくる子供に、なにがおきるかわからないという不安を、本人も相手の親族ももつ場合が多く、それが結婚のさまたげとなったことが少なくないと思われます。そのような不安が被爆者にとって自分の責任でないだけに、たまらない悲しみです。
家庭生活
悩んだことのある被爆者は全体の30%で、男女ともに同じ率。
内容:病弱のため、家族に生計の苦労をかけた。
(男子で高率)
病弱のため、家事や身の回りのことができなくなった。
(女子に高率)
親らしいことをしてやれなかった。
離婚をふくむ家庭不和におちいった。20%
・楽しいはずの家庭生活が原爆によって数々の問題を引きおこし、被爆者たちの悲しみは年をとるだけまし、結局死ぬまで悩みは果てることのないのです。
子供の出生、子育て
悩んだことのある被爆者は全体の38%で、今までの生活段階より悩んだ人の比率が高くなっている。
男子の比率より女子の比率の方が高い。
年齢的に見ると、被爆時5〜24歳、調査当時45〜64歳までの人に多い。
内容:子供を生むことや生まれてくる子供への不安 70%
・どんな親でも子供の健康は心配なものです。まして被爆者となると、自分の子供に障害があったり、体が弱いとすぐ原爆症のことが頭に浮かんで、いたってたってもいられなくなるといった経験をしています。